建売住宅は、注文住宅とは違い、完成した状態で採光・通風・広さ・動線などをチェックをすることができるので、購入後の生活シーンをイメージすることは容易です。しかし、完成しているといって購入決済前に住宅設備を”お試し使用”することはできません。トイレのウォシュレットを試すわけにはいきませんし、洗面化粧台で顔を洗うわけにもいきませんし、当然のことながら湯舟につかるのもご法度です。ましてや、キッチンで実際に調理をすることなど到底叶わぬオーダーです。
ということで本コラムでは、具体的に試し利用をしてみないとその良し悪しが分からない住宅設備の最高峰とも言えるキッチンについて、購入前チェックポイント3つを分かりやすく解説してみたいと思います。
【建売住宅のキッチンチェックポイント】
1.腰を痛めないか?高さと身長の関係
2.利き手は合ってる?レンジの位置
3.ブレーカー大丈夫?専用コンセント数
基本的には、個人の好みで選ぶ・決める…で構わないと思いますし、入居後使ってみてどうしても相性悪ければ交換やリフォームで対応もできなくもありません。複数棟数以上選べるような状態でしたら、比較検討の判断材料として本コラムを参考になさってください。
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特別なコンセプト等がない限りは、大半の建売住宅のキッチンは85cm高になっています。これは概ね165cm半ばくらいまでの女性の身長を意識したメーカー側が設定したている標準高です。なので、身長がもっと高い男性や、女性でも170cm台の方が毎日使っていると少し違和感を感じると思います。特に慢性的な腰痛持ちの方ですとあまり好ましくないかもしれません。
身長が低くて、キッチンが高すぎるという方は、底が少し厚めのスリッパを履いたり、厚手のカーペットを敷いて多少の調整はできますが「キッチン自体が低すぎる」というのは、実は対処ができません。厚めのまな板で食材を切るということはできますが、それ以外はなんとも調整しがたいところです。
とにかく、お料理が好きで、一日2~3回以上キッチンでがっちりしっかり料理をすることがあるということであれば、180cmをゆうに超えるような身長の方は、標準高85cmのキッチンは回避して、入れ替えるか注文住宅の道を模索することも合わせて検討した方がが良いと思います。
キッチンがガスコンロ仕様だったと仮定して、少し厚手のフライパンを持ってチャーハンを火にかけて料理しているご自身を想像してみてください。そのフライパンは右と左、どちらの手でお持ちででしょうか。プライパンや鍋にかける手は決して利き手とは限らないそうで、習慣によるところが多いそうです。もし右手でいつもお持ちの場合は、願わくばキッチンに向かって右側にガスコンロがあることが望ましいと思います。
当然のことながら、建売のプランは敷地条件等により間取りが決まり、対面型のキッチンの位置が決まると自動的にガスコンロは壁側になり、キッチンのカウンタ―トップレイアウトは自動的に決まっていきます。フライパンをどっちの手で持つ人が多いのか?などということをあまり意識して仕様選択はされていません。
複数棟数ある建売の分譲地でしたら、レンジの向きが両方のバージョンのキッチンががあるでしょうから、両方見て、実際に面前で立ってみて、イメージ感覚の違いを体感されてみてはいかがでしょうか。
建売住宅を設計する際に、本当にその分譲会社の設計が良心的か否かの違いが如実に現われてくるのが、コンセントの数や位置だと思います。コストダウンしたければコンセントの数は減らせばよいわけですし、設置高や位置をいちいち部屋・間取り別に考えないで一律運用ルールを定めて進めたほうが簡単です。
しかし、電気配線図面とにらめっこしながら、住まう方の生活シーンや家電品の特徴をイメージしながらちゃんと計画していると、購入当時は気づかれないものの、入居後には確実にその設計の丁寧さはジワジワ伝わっているのではないかと思います。
コンセントの位置と数について特に気を付けなければならないのは、キッチン廻りです。(特に外国製の)高性能電子レンジやトースター、高速沸騰の電気ポット、炊飯器、コーヒーメーカーなど、多忙な平日の朝に同時平行で利用したい家電品はいくつかあると思います。コンセントの口数が不足していたり、また、不足しているからといって、これらをタコ足配線していたりすると危険です。ブレーカーが電気を遮断してしまいますし、発火等の恐れもあります。食器棚設置予定場所近辺に、それらの家電の数の分だけコンセントが十分に確保されているのかチェックしておきましょう。
なお、食器棚置き場でいうと、始めからカップボードが据え置かれていない建売住宅の場合、壁についているコンセントの位置で、ご自身が選ぶことになるカップボードの形状・高さ等が多少影響されてくるので、その点はご留意ください。
ということで、建売住宅の購入検討時にチェックすべきキッチン廻りのポイント3つを解説させて頂きました。最後にもうワンポイントだけ付け加えますと、新築建物のキッチンを取り替えるのはあまりお奨めしません。理由は、家具や食器棚とは違い、フローリングや巾木、壁紙・天井材、給排水管接続工事など、多面にわたる工程があり、想像以上に工事が広範囲になるためです。参考になさってください。