「失敗しない建売住宅の購入」にまつわるハウツー系サイトは昨今とても充実してきています。Googleなどで検索すれば、建売商品の良い・悪いの見抜き方や、建売業者のアフターサービス体制チェックの仕方や、値引きや営業マンとの商談で気を付けるべきことなど…とても多くの情報がネット上で溢れています。しかし、事前にそういった情報をチェックしていても、いざ建売住宅を購入しようとすると様々な”想定外”の事態が発生して皆さん苦労されているのも事実です。中にはそれらを理由に建売住宅の購入を断念されいてる方もいらっしゃいます。そこで本コラムでは、複数の住まいの購入経験者談をもとに、見落としがちなネック事項で、特に気を付けるべきことを3つをピックアップしみました。
ポイント1.資金援助の有無に関係なくご両親には必ず事前相談を!
ポイント2.建売購入期にクレジットカードは百害あって一利なし!
ポイント3.夫婦の共有名義や連帯保証に関する正しい理解を!
建売という商品そのものに関するお話というよりも、「親族間コミュニケーション」「個人信用情報」「夫婦間の法律関係」などといった普段は全く意識していない分野に集中しているのが特徴です。建売を購入するというのは人生における大きなイベントのひとつですから、ご本人たちだけの意思や都合だけではなかなかすんなりいかないということなのでしょう。それでは気を付けるべきことをひとつずつ見ていきましょう。
目次
建売購入時に、ご両親の資金援助等をあてにしていない方々は、ご両親に対して事前に購入計画を報告をしていなかったり、自分たちで自由に選びたい(=不用意な干渉を回避したい)がために、物件の購入を決めるまではあえて相談をしないことが多いようです。それ自体は一見とても理にかなっているような気がしますが、意外なことにこういった事後報告は親族間に「無駄なしこり」を発生させてしまう要因になってしまうようです。
「自分たちの蓄財や収入の範囲で購入する住まいのことなので、特に両親には知らせず、気に入った建売住宅を見つけて契約をして、いざ残金決済や引越しの準備を始めようという段階で、念のため知らせておこうと思い両親に連絡したところ、突然激怒され、もう色々説教されて大変でした。」と話すのは2年前に建売住宅を購入した30代のAさんご夫婦。
「住宅ローン実行の手続きをする前に、やれ建物を自分達にも見せろだとか、計画を延期しろだとか、建売業者の営業の責任者に会わせろとか、終いには物件に関するネガティブな情報をありとあらゆる方面から見つけてきては毎晩のようにそれらを連絡報告をしてくる始末で…私たちは自立して家を持つことを歓迎、賛成してくれるものと思っていたのでびっくりでした。」
結局、そのドタバタに時間をとられ、建売業者に事情を説明して1か月ほど予定を送らせて最終的には引越しはできたとのことですが、それから1年以上、ご両親とのギクシャクした関係が続いたそうです。ただ、その後”初孫”の誕生等で事態は収拾に向かったそうです。
「孫をあやしながら父親が言っていたのですが、”いくら経済的に自立したとはいえ、子供のことはいつまでたっても心配なのが親というもの。家を買うなどという大イベントで失敗をすることがないようについつい心配してしまうものなんだよ”ときついことを色々言ったことを後悔しているようでした。購入資金の支援の有無に関係なく、先に一言だけでも知らせておくべきだったと思います。親御さんの”心配”はやっぱハンパないです。これから購入検討する人は是非この点は気を付けるべきことだと思います。」
ご家庭のご事情はそれぞれ様々ですから一概には言えませんが、もしご両親とのご関係が良好で、身近な所にいらっしゃるようでしたら、ご契約の前に一緒に見学に行く機会をセッティングしてあげるのも良いかもしれません。購入のプロセスに加わわるだけでもご両親は安堵するのではないでしょうか。
個人信用情報になにかしらの「異動」情報の記載がある方は、住宅ローン審査は否決されてしまい、多額の借入残高を抱えていると借入希望額を減額されてしまう等というのはとてもよく知られた話です。なので、建売住宅の購入検討期に入っている方々は消費者金融はもちろん、自動車等を含めたその他借り入れをなるべくしないよう、またはそれらを滞納するなどして個人信用情報を棄損しないよう、気を付けるべきこととして強く認識されていると思います。
そんな中、意外に皆さんが見落としてしまいがちなのが、クレジットカードの存在です。キャッシュレス化が急激に加速する中、20~30代の方の保有率は高まっていて、建売購入を検討されている方の大半はクレジットカード保有者です。そして、月額の利用限度額とほぼ同額の「キャッシング利用可能枠」が標準で付与されています。実はあまり知られていないのですが、キャッシングの残高がなくても、単純な利用可能「枠」そのものが住宅ローン審査に影響を及ぼします。いつでも借入が可能なキャッシング「枠」については、もう既にそれを「借りている」と見なして銀行が与信審査を行うからです。また、ちょっと高額な商品をリボルビング払いやボーナス一括払いを利用して購入している場合、完済するまでは割賦残債とみなされるので、それらも大きく住宅ローンの審査に影響してきます。
「兄が数年前に個人信用情報の関係で住宅ローン審査の”否決”を宣告されたことがあり、自分はとりわけそのあたりは気を付けていましたが、実際に自分が建売住宅を購入しようと審査をしてもらったら、否決はされないものの、希望額を減額された回答が出てきたので、え?なんで?って、びっくりしました。色々調べたら、一切使っていないクレジットカードのキャッシング枠が2枚合計200万円あって、どうもその印象が悪かったようです」というのは、昨年建売住宅を購入したBさん。
結局、その2枚のクレジットカードを解約してから再度住宅ローンの審査を申し込み、希望額の借り入れをしたそうです。
「住宅ローンの審査を受けようと思っている人生のステージにある人は、むやみにクレジットカードなどを持たないよう気を付けることが大事だと思いました。とはいえ、サブスクや公共料金支払い等にはクレジットカードがとても便利なのは間違いないので、保有を継続するならせめてキャッシング枠を解約・無効にしておくことくらいはやっておくべきです。これは本当に気をつけるべきことだと同年代の友人にもアドバイスしています。」
建売住宅を購入するご家族は、昭和から平成にかけてくらいの時代であれば世帯主(主に男性・夫側が大半でした)が単独名義人かつ借入主となり、ローンの連帯保証人はなく、一定の保証料を支払うことで、住宅ローンが成立していました。しかし時代は変わり、女性の社会進出が進み、共働き世帯が比率でいうと全世帯の半数を超え一般化しました。それに伴い、奥様側の収入も返済原資として見込む借入計画である場合や、各々が負担する頭金や借り入れる住宅ローンの金額に応じて、土地建物を共有名義にするという建売の購入形式が増えてきました。そんな中、予想だにしなかった事態に直面して、購入を躊躇してしまうご夫婦が増えています。
「夫と結婚して、子宝にも恵まれ、仕事も続けながらいよいよ夢のマイホームを購入しようと思い、いざ住宅ローンの申し込みへ夫婦そろっていったのですが…」と話すのは昨年やっとの思いで建売住宅を購入したCさん。
「出す頭金も借り入れるローンの金額もほぼ夫と同額だったのでほぼ半々の共有名義での購入を検討していたのですが、そこでいきなり”それならご夫婦それぞれがお互いの連帯保証人になっていただきます”って言われたんです。親から連帯保証人にだけはなるなって家訓のように言われてきたので、びっくりしてしまって…。なぜ夫には私と同等の収入があるのに、私が夫の連帯保証人にならないといけないのかって全然意味が分からなくて。別に夫を信用していないわけではないですし、離婚する気も毛頭ないのですが、万が一夫がギャンブル等で多額の借金を背負ったりしたらどうするのかって色々考えたら恐くなってしまい、一旦計画は中止しました。」
その後、色々調べていくうちに、C子さんの心配の大半が誤解であったことが分かり、無事建売住宅の購入に至ったそうですが「それでも共働きのご夫婦でしたら、共有名義で不動産を買うことのメリット・デメリットや、連帯保証に関する正しい知識を身に着けてから住宅は購入検討をするべきです。」と断言されていました。
建売住宅の購入を検討される方は、駅距離や価格、住環境等のチェックに余念がないと思いますが、住まいの購入経験をされた方々が指摘されているこういった身近な問題にも目を向けておくことも大事であるということがおわかりいただけたと思います。ということで本コラムでは建売住宅を購入する際に気を付けること3つのポイントをご説明させていただきました。参考になさってください。